月夜に舞う桜華
せっかくの申し出だけど―――と断る前に、あたしは誰かの手に押された。
「いいぜ。送ってやれ」
真っ直ぐ帰るんじゃつまんねえから、どっかドライブでもしてこいよ。
「ちょ、司?!」
「ありがとうございます!!」
何言ってんのこの馬鹿!
ギロリと睨めば司はひらひらと満面の笑みを向けながら手を振ってくる。
「桜姫!行きましょうっ」
今にもスキップしそうな勢いでバイクに戻っていく彼にあたしは脱力した。
(司の奴………覚えとけ)
倉庫に戻ったら殴ることを心に決め、あたしはノロノロとバイクに向かう。
「椿!」
「………」
肩越しに振り返れば、司の笑顔。
「楽しんでこいよ!!」
「(――――馬鹿野郎)」
一瞬だけ変わる表情。それは本当な僅かで端から見たらただ笑っているだけにしかみえない。