月夜に舞う桜華
その笑みに、違和感を覚えた。
「………」
「どうしました?」
「あんた、何?」
スッと身構える。
きょとんと瞬きを繰り返した雷心は、フッと頬を緩めた。
「流石、元皇蘭総長。頭は良いみたいだ」
「………」
「ま、俺はあんたをどうこうする訳じゃない」
そんなに警戒しなくてもいいと言われて警戒を解く馬鹿はいない。
雷心もわかっているから肩を竦めるだけだ。
「何故、ここに連れてきた」
「本当はあっちでも良いと思ったんだけどさ。うちの総長様がここがいいってさ」
仕方のない奴だよね。
うちの総長?つまり、こいつは別の族の人間か………。
(司の奴、気づかなかったのか……?)
それとも、気づかぬ振りをしていたか。