月夜に舞う桜華



どっちにしても、帰ったら殴ってやる。


「ほら早く。総長待ってるから」

「………行きたくないと言ったら?」

「無理だよ」


逃げらんないよ?
バイクの鍵はここだし。
奪い取るのも手だけど、自慢じゃないけど俺、強い方なんだ。


声から、それが嘘じゃないことが伝わってくる。
確かに、逃げられない。


「取って食う訳じゃないよ」


ここにいるの俺達三人だけだし。
そういえば、他のバイクや人間の気配はない。雷心の言っていることは本当だろう。


大人しく、ついていった方が、いいか。


「………分かった」

「物わかりが良くて嬉しいよ」


雷心は、にっこりと笑うとゆっくりと歩き出した。その後ろをあたしは警戒心むき出しで追い掛ける。


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