月夜に舞う桜華



これからあたし達が進む道は真っ白な道だ。どこに続いているかも分からない。
ただ、それでもあたしの心は穏やかだ。
こんな形であたしは終わってしまったけれど、それがあたしの運命だったのだと。


――――――。


『?』


誰かに呼ばれた気がして、あたしは足を止めた。


――――――き。


また、だ。
何か声が聞こえてくる。


あたしは、肩越しに振りかえるが、目に映るのは和と桜の木。


『和、あたしを呼んだか?』

『?いや』

『………気のせいか?』


首を傾けながら小さく唸る。
気のせいか、と歩み始めると、また、呼ばれた。


―――――ばき。


『………』


あたしの足はその場に縫い付けられたかのように動かなくなった。


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