月夜に舞う桜華



『なんでもねーよ』


乾いた笑みを浮かべる和に、俺は不安を覚えた。


『そうか?』

『あぁ………そうだ、お前ら』

『?』

『桜姫のこと、好きか?』



和に聞かれて、キョトンとした俺たちは顔を見合わせ、強く頷く。


『『勿論!!』』


大事な俺達の総長だし!!


『………だよな』

『…………』


和がそんなことを言うなんて不思議だと思ったんだ。


(深刻な顔して………何を考えている?)

俺は、ジッと和を見つめた。
嫌な予感が、する。


毎日喧嘩して馬鹿やって、笑って。
そんな日々が、崩れてしまうような。



嫌な、予感。




その日から俺は、和、と言うよりも桜姫の近くにいるように努めた。


根拠なんかない。
本能が桜姫の側にいろという。


< 289 / 310 >

この作品をシェア

pagetop