月夜に舞う桜華
『桜姫』
『ん………?』
桜姫は、いつも座っているソファーに座りながらぼんやりとしていた。
名前を呼べば、ゆっくりとした動作で俺の方を向く。
『どうした?』
『なんか、元気ないな』
そう言えば、桜姫はそんなことないと小さく笑う。
その笑みが余りにも消え入りそうで、俺は、無意識に叫んでいた。
『俺は、ずっと桜姫の側にいる!』
例え、皇蘭がなくなっても、桜姫が結婚しても、ずっと、ずっと死ぬまで!
『………いきなり、どうしたんだ?』
桜姫は、一瞬目を見開くと苦笑する。
何となく、恥ずかしさを覚えた。
『………何となく。言いたかった』
『なんだそれ?』
クスクス笑う桜姫に、体が熱くなる。
すると、ドタドタ足音が聞こえたかと思えば、背中に衝撃が走る。