王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「いいよ。名前で。友達なんだろ?」

 綾菜はこくんと頷いた。

 久我に認めてもらえたことが、やけにうれしい。

「けど、ひとつだけ確認してもいいか?」

「はい。なんでしょう」

「あいつらは初めての男友達。じゃあ、俺は?」

 考えたことがなかった。

 友達は違う気がする。

 頼れる寮生とも違う。

 面倒見のいい兄はちょっと近いけれど、いまいちピンとこない。

「久我さんは」

 言葉にしながら、さらに考える。

「私の大切な」

 そう。大事。

 いないと、落ちつかない。

「大切な?」

 先を促す久我の声が掠れた。

「……ルームメートです」

 これこれ。

 なぜ、すぐに思いつかなかったのか。

 綾菜は満面の笑みで答えた。

「……もう、いい」

 今度こそ、久我は朝まで綾菜と口をきいてくれなかった。
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