王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

四話


「綾菜、うらやましいっ」

「この幸せ者が」

 集会用のホール。

 舞踏会すら開催できそうな会場の中で、綾菜は羨望の的になっていた。

 肘で何度も身体をつつかれて、冷やかされる。

「ねえねえ、理佳ちゃん。相手を指名できるってそんなにうらやましがられることなの?」

 約束どおりに隣にいてくれる理佳のブレザーを引っぱって、綾菜は尋ねた。

「聞かれても、私も全く理解ができない」

「だよねえ」

 これから待っているのは、きもだめし。

 指名ができるように配慮してもらったとはいえ、誰と一緒だろうと怖いことに変わりはない。

「綾菜も理佳も、そんなことを言っていると枯れるよ」

 いつもの友人たちが呆れた顔をする。

「よく考えてもみなよ。男子を指名するなんて、みんなの前で告白をするようなものだよ」

「公認カップルになるチャンス。頑張れ」

 綾菜はぽかーんと口を開けた。

 男の子に告白など、今の綾菜には来世を想像するより難しい。


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