王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「見なかったふりをしてくれてもいいのに」

 悪い点数なのが気恥ずかしいのと、嫌味を言われたのが腹立たしいのとで、すぐには素直になれない。

 点数の場所を指でぐりぐりしながら、綾菜はぷいっとそっぽを向いた。

「見ないふりをしてやったら、点数が少しはよくなるとでも? 不毛だな」

「意地悪ばっかり言っていると、その口を縫っちゃうよ。数学は苦手だけど、被服の実技は得意なんだから」

 公式と聞くだけで鳥肌がたつほど数学は嫌い。因数分解を解くくらいなら、徹夜でセーターを編めといわれたほうがずっと楽。

「自慢になるか。被服科で実技までダメだったら目も当てられない」

 痛いところをずばりつかれ、綾菜は顔をしかめた。

 言葉ではいつも勝てない。

「たまには慰めてやろうとか思わないわけ? 私だって傷つくんだよ」

 綾菜は思いきりあっかんべーをしてみせた。

 なにか言っても百倍の嫌味で返されるのなら、態度で勝負だ。

 あっかんべーにはあっかんべーで帰ってくるのか、それともまたきつい言葉の矢が放たれるのか。

 身構えて待っていたが、なんの攻撃もやってこない。

「琥珀?」

 拍子抜けして御影を見ると、鋭いはずの視線が左右に揺れている。

 様子がおかしい。
< 161 / 191 >

この作品をシェア

pagetop