王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
「見なかったふりをしてくれてもいいのに」
悪い点数なのが気恥ずかしいのと、嫌味を言われたのが腹立たしいのとで、すぐには素直になれない。
点数の場所を指でぐりぐりしながら、綾菜はぷいっとそっぽを向いた。
「見ないふりをしてやったら、点数が少しはよくなるとでも? 不毛だな」
「意地悪ばっかり言っていると、その口を縫っちゃうよ。数学は苦手だけど、被服の実技は得意なんだから」
公式と聞くだけで鳥肌がたつほど数学は嫌い。因数分解を解くくらいなら、徹夜でセーターを編めといわれたほうがずっと楽。
「自慢になるか。被服科で実技までダメだったら目も当てられない」
痛いところをずばりつかれ、綾菜は顔をしかめた。
言葉ではいつも勝てない。
「たまには慰めてやろうとか思わないわけ? 私だって傷つくんだよ」
綾菜は思いきりあっかんべーをしてみせた。
なにか言っても百倍の嫌味で返されるのなら、態度で勝負だ。
あっかんべーにはあっかんべーで帰ってくるのか、それともまたきつい言葉の矢が放たれるのか。
身構えて待っていたが、なんの攻撃もやってこない。
「琥珀?」
拍子抜けして御影を見ると、鋭いはずの視線が左右に揺れている。
様子がおかしい。