言い訳
 やばいな。あたし呆れられた?
 体育祭の片付けが終わる前まではあんなに浮き立っていたあたしの心がしゅるしゅると音を立てて萎んでいくような気がした。
「……お前なんか色々言ってっけど、結局は俺と2ケツすんのが嫌なんだろ」
 中村はそう言うとふいと顔をそらした。
 それを聞いたあたしは思わずぎくりと固まった。
 自分の心を言い当てられたからではない。その中村の言葉が……声が、どこか少し拗ねているように聞こえたからだ。
「……中村、ひょっとして、拗ねてる?」
「……拗ねてない!」
 中村はあたしの言葉に噛み付きこそしたが、その耳は傍目からでもわかるほど真っ赤に染まっていた。
「……ふっ」
 ややあって、あたしは思わず噴き出してしまった。
 そんなあたしを中村はジロリと睨む。
「おいこらなんで笑う?」
「え……いや? 笑ってなんかないよ……ぶふっ」
「嘘つけ! 思いっきり堪えてんじゃねーか」
「そんなことないよ? ただっ……中村がす、拗ねてんのがおかしくて……あはっ」
「拗ねてない」
 言いつつも中村の表情はどこかむくれていて、あたしはますます笑いのツボに嵌まってしまう。
「あはははは拗ねてやんの――――!」
「だから拗ねてないッ!」
 そうやってあたしを指差して怒鳴る中村の耳はますます赤くなっていって――、
 そしてあたしはそんな中村を見て何故か少しほっとした。

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