幕末怪異聞録



ズンズンと奥に進み、土方の部屋に着いた。


襖に手を掛けたが、そのままピタリと止まり口を開けた。


「土方。時雨だが入ってもいいか?」


「あ?おう、入れ。」


その声を聞いて時雨は襖を引いた。


そんないつもと様子の違う時雨に土方は心の中で首を傾げた。


しかし特に気にもせず、チラリと目をやっただけでまた書き物を始めた。


「どうした。何か用か?」


「ああ。今晩私と総司、此方に泊まってもかまわないか?」


「まぁ一晩中くれぇなら特に問題はねぇ。

しかし、そんなに改まってどうしたんだ。」


「……。」


急に押し黙った時雨に土方は筆を止め、振り返った。


「……っ!」


何か言いたそうな時雨の顔を見て土方は息を飲んだが、すぐに直り筆を走らせた。


「何か聞いてほしいことがあるなら聞いてやる。だが、特にねぇならさっさと出ていけ。」



「ーーそうだな。忙しそうだし出ていくよ。邪魔してすまなかった。」


時雨はそう言い残してさっさと部屋を出てしまった。


土方は時雨が出ていった襖を見つめた。


(何か言いたげだったが……。気のせいか……?)


ふうっと一息ついてまた手元に目をやった。








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