花日記

「飯など、旨いも不味いもなかろう。」



俺が呆れ声で言うのに対し、綾子はムッとして言い返してきた。



「旨いも不味いもありますよ!
やっぱり産地や品種によって味って違うし、釜炊きと炊飯器じゃ、全然違うんですから!」



「炊飯器?」



聞いたことのないそれに、思わず首を傾げる。



綾子は、しまった、とでも言いたそうな顔で、どうしたら良いか考えているのかころころと表情を変え、それがなかなか面白い。



綾子は思ったことは何でも顔に出るようだ。



まるで百面相だな、と思えるくらい俺はどこか冷静で。



ころころと変わっていく綾子の表情を見ているのも悪くないな、なんて思いながらもかなり困っているようなので深くは尋ねないことに決めた。



「よい、未来には炊飯器なるものがあるのか?」



「そ、そう!
機械…、からくりを使ってご飯を炊くんですよ。」



「ほう、それは是非一度見てみたいものだな。」



からくりが飯を炊く、か。



未来には面白いものがあるのだな、と漠然と思った。


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