クロトラ!-妖刀奇譚-


それから、名前。



「…わさびっていうのが、名前?」



あだ名にしても変な名前だと思いながらたずねると、不思議な連れはうなずいた。



「ああ。空岩寂則ってのが本名だ。」


「からいわさびのり…からい・わさび……って、えぇー…?」




ふざけている。

いろんな意味で一体この男は何者なのか。





「――おい、早く入って戸閉めてくれ。風で火がつかねぇ。」



呼ばれて少女はあわてて障子を閉めた。



「えっと、お邪魔します…」


障子が閉まると、ワサビは火打ち金を打った。


種火が育って行灯に点るまでのあいだ、少女は部屋の中をくるりと見渡した。


< 48 / 49 >

この作品をシェア

pagetop