君を想うとⅢ~True love~
母子手帳を貰って、タクシーの中での帰り道。
理央は何も喋らず、ずっと窓の外を眺めていた。
私は…
ずっと桐谷慎のくれた、新しい命を
優しく優しく撫で続けていた。
今、想うと…
私って…相当のバカだと思う。
シングルマザーで子どもを育てるって並大抵のことじゃない。
お金だって時間だって、いくらあっても足りないし、お父さんのいない仁(ジン)には、いろんなところで淋しい思いをさせてしまう。
だけど…、あの時の私は不安よりも何よりも、嬉しさのほうが勝っていた。
大好きな桐谷慎の小さなカケラ。
彼が確かに私を愛してくれた、その証(あかし)。
堕ろすなんて、
この子を殺しちゃうなんて、
絶対にそんな酷いコトしたくなかった。
だって…
この子は私をお母さんに選んでくれたんだもん。
桐谷慎がお父さんで、私がお母さん。
そんな私達を両親に選んでくれた、この子を堕ろすなんて絶対に考えられなかった。