君を想うとⅢ~True love~
元水泳部・エース。
しかも元国体選手の藤堂センパイの足は、30代にしてはやたらと速い。
か弱い足でテクテク走ってもちっともその差は縮まらない。
やっとのことで追いつくと…
「きゃ~!!つめたい!つめたいよ、しゅーちゃんぱぱ!」
「あはは!!びしょ濡れだになっちまったな、仁~!!」
仁とセンパイはゲラゲラ笑いながら川の中で、水のかけあいっこをしている最中。
夏の鋭い光が、水しぶきに反射してキラキラと光る。
まるでプリズムのように輝く、水しぶき。
そして、強い草いきれ。
そんな夏の日差しの中で、子どもみたいに無邪気にはしゃぐ、藤堂センパイ。
昔…伊織が言っていたっけ。
『しゅーちゃんはきっといいパパになる…』って。
仁とセンパイ。
水しぶきを上げながら楽しそうに笑いあう二人を見て、こう思う。
――うん…。その通りだね、伊織。
私達が好きになったこの人は、
子どもみたいに無邪気で、
まっすぐで、
嘘偽りのない人だから。
彼の優しさに触れるたびに思い知らされる。
私は彼の過去も未来も、全部ひっくるめて手に入れたいんだ。
誰にでも優しい、子どもみたいに素直なセンパイも、きっと素敵なパパになるであろう、未来のセンパイも。
過去も未来も
私はこの人の人生の全部が欲しい。
大好きだから
誰よりも大好きだから
彼が欲しくて欲しくて、堪らない。