こねたぼっくす
それから少しして、廊下が騒がしくなった。
廊下側の窓を少し開けて聞き耳を立てる。
「斗真と九条 美華がべろちゅーしたって!」
はああああああああああ!?
暴走しすぎだろあの野郎!
美華ちゃんになんてことを…っ!
怒りで震える俺のそばを、美華ちゃんが通った。
「美華ちゃん!!」
「お、櫻沢くん…」
「大丈夫!?斗真のバカがほんっとにごめん!」
頭を下げて謝った。
あああ、もう美華ちゃんと目合わせらんないし!
斗真の野郎…覚えてろよ!
美華ちゃんの唇を奪うなんて俺が許さねぇ!
「あの、櫻沢くんっ…頭、上げて?」
「でも…」
「いいから、ねっ?」
優しい声に頭を上げれば、美華ちゃんは笑ってくれた。
けどその顔はまだ赤くて、目には涙が溜まってる。
「ほんとに、ごめんね…」
「いいの…櫻沢くんが謝ることじゃないし。それに……」
何かを思い出したように、目を逸らす。
さっきよりも顔が赤くなっていた。
ああ…キスのこと、思い出したんだ。
そのとき、美華ちゃんの右手が赤くなっていることに気が付いた。
斗真のこと、叩いたのかな。
案外やるなぁ、美華ちゃん。
でもそれはきっと、嫌だったからとかじゃなくて…
――恥ずかしかったから、なんだろう。
斗真のことだから、キスしたあとにお前は俺のモノだとか言ったのかもしれない。
それで思わず…かな。
美華ちゃんを縛っているものはなんなんだろう。
早く、斗真とくっついちゃえ。
そう思うけど伝えられない。
俺だって、君のことが好きなんだよ……。