涙飴
文化祭の時の記憶が蘇る。
最悪だった文化祭。


「あと、レポートの宿題やってた日も泣いてたよな」


やっぱり五十嵐に気付かれていた。
正直あまり答えたくはなかった。

第一五十嵐には関係ないし、答える義務もないって思ったけど、それを言うと、さっき自分が言った事との大きな矛盾が生じるので言えない。

あたしが黙っていると、五十嵐がまた口を開いた。


「……もしかしてお前……九條の彼氏が好きなの?」


「なっ何で?」


つい動揺してしまう。
いきなり言い当てられるなんて想像もしていなかった。


「だって文化祭の時、そいつから写真貰って泣いてただろ?」


あ……分ってたんだ。


「……なんであの時いきなり謝って来たの?
あたしは五十嵐が自分のせいであたしが泣いてるって勘違いしたのかと思ってた……」


話がかみ合っていないけど、それよりなんで謝って来たのか気になった。


「あ…あれは、だから……俺が謝れば少しは泣きやむかと思ったんだよ。
……涙とか本当うぜぇんだよ。周りまで嫌な空気にさせる」


言い方はいつもの恐い言い方だけど、五十嵐の顔は赤くなっていた。

恐いなんて、思わなかった。
< 101 / 268 >

この作品をシェア

pagetop