涙飴
鳴海の手が止まる。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。

鳴海の口が開いた瞬間、五十嵐が鳴海よりも先に声を出した。


「あんたに関係ないだろ」


良く分からないが、怒っている様だった。
それは美津菜も感じたみたいで、美津菜の表情からは笑顔が消えていた。


「……あ、そうだよね。
ごめんね、こんな事聞いちゃって」


苦笑いでそう言うと、美津菜は黙って俯いた。
どうしてだかは分からないけれど、あたしは無性に腹が立った。


「別に良いじゃん聞いたって。
色々事情があるのかもしれないけど、そんなの知らなかったし、聞きたかったから聞いた、それじゃ駄目なの?」


何であたし、こんなにむきになって五十嵐に反論しているんだろう。
すると、鳴海が遠慮がちに口を挟んで来た。


「あ…のさ……別に大した事じゃねーよ。
俺、妹がいてさ、保育園通ってて。
うちの親共働きだから迎えに行けないから俺が行ってんだ。
家から学校まで結構遠いからさ、早く帰んねーと間に合わなくてさ」


「そうなんだ……」


そう答える美津菜は複雑な表情だった。
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