俺はお前だけの王子さま
ふふふと笑う私に、王子くんは少し口元を緩める。


「まぁ…俺が中学行く頃からはほとんどいないけどな」


「そうなんだ…それは淋しいね」


ここで王子くんはスッと冷めた目をした。


「別に、淋しいとか感じたことはねぇよ。」


「え…?」


急に雰囲気の変わった王子くんを私は少し戸惑いながら見た。


そんな私に気付いた王子くんは私に遠慮するようにまた少し表情を緩めた。


「つ―か…そういう風に育てられたから」


「だけど…やっぱり淋しいとか泣きたいとか、人間ならあるでしょ…?」


「さぁ…?正直俺はあんまわかんねぇな。」


そんな…


「…じゃあ、お母さんの前で泣いたことないの?」


王子くんは考えるように少し首を傾げた。



「あぁ。少なくとも小学校入って以降は記憶にないな」



< 317 / 558 >

この作品をシェア

pagetop