俺はお前だけの王子さま
「王子くん…?」



額を寄せたまま黙る俺の顔を渡瀬は少し覗きこんだ。



「あぁ、いや…」


俺はゆっくり渡瀬から額を離すと小さく息を吐いた。


そんな俺を渡瀬は少し不安そうに見る。


俺は渡瀬の不安をぬぐうように少し口元をゆるめると


汗ばんだ渡瀬の額に手をやった。


渡瀬の額に汗でひっついている細くて柔らかな髪を優しく取ってやる。


「マジで暑いな…」



ブーンと扇風機が回る度に
ぬるくてゆるい風がふく。



「クーラーついてないもんね…私汗くさいかも」


渡瀬は少し赤くなると
遠慮するように俺から離れようとした。


俺はそんな渡瀬の肩を引き寄せる。




今は離したくない


今はまだ…


俺はもう一度、渡瀬の首筋に顔を近付けた。



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