俺はお前だけの王子さま
予約した窓辺の席。


ガラスの外には暗くなり始めた空の下夜景が一望出来た。


「綺麗だね…」


外を眺め感動する渡瀬。

そんな渡瀬を眺める俺。


「なんか飲む?」


「あ、じゃあオレンジジュース」


真面目にそう言う渡瀬に俺は思わずメニュー表を落としそうになった。


「お前…高校生かよ」


「だ、だって…変かな?」


「いや…別にマジで飲みたいなら良いけど…」


俺は軽く手を上げるとウェイターにオレンジジュースとワインを頼んだ。


「ワイン飲むなんて大人だね」


わざとらしく茶化す渡瀬。


「別に…結婚式ん時は渡瀬も飲んでたろ」


「私は甘いカクテルしか飲めないもん」


「………」


渡瀬は嬉しそうにニコニコと笑っている。


渡瀬は昔から、こんなしょうもない内容でも俺の横にいるだけで

いつも嬉しそうに笑っていた。


そんな渡瀬に俺も小さく微笑んだ。






コースで予約していた料理が運ばれてきた。


前菜にスープ

それだけで渡瀬は少し苦しそうだった。


「…なに?なんか食ってきたの?」


俺の質問に渡瀬は苦笑いする。


そういや山ちゃんが風邪気味とか言ってたっけ…


「気分悪いなら無理すんなよ」


「ん―…でも、もったいない」


そう良いつつも、マジで調子が悪いのか…

メイン料理は半分以上残してお皿の端にまとめた渡瀬。


「ごめんなさい…」


渡瀬は申し訳なさそうに謝った。




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