俺はお前だけの王子さま
空が真っ暗になり月が輝きだした頃、デザートが運ばれてきた。


デザート…


今日のプロポーズには実は少し計画があった。


それは、デザートの後に俺の小さな合図でウェイターが花束を持ってくるというもの。


キャラじゃねぇし正直やるかどうか少し迷ったが…これくらいの演出は別に悪くないだろう。


俺は無意識にポケットの中にある箱を確認する。


はっきり言って緊張していた。


顔にこそ出さないが…


普通にこういう時、緊張しない男なんてきっといない。


そのせいで、俺は渡瀬の小さなサインに気付けずにいた。


「ごめんなさい、すぐ戻るね」


渡瀬はそう言うとデザートに口をつける前にトイレに行った。













しばらくして戻ってきた渡瀬は顔色が随分悪かった。


「…大丈夫か?」


「うん。ごめんね」


無理に笑う渡瀬。


「……………」


そんな渡瀬を見て――…



俺は計画を捨ててレストランを出ることにした。


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