俺はお前だけの王子さま

気付いてしまった気持ち

俺の家から比較的近いその場所は、存在だけは知っていた。



小さな町工場。


ここで渡瀬の母親は働いているらしい。



一度家に帰った俺は
着替えもせずにここに来た。



激しくなる雨が
小さな工場を陰気に見せる。


開けられたままの扉



傘をたたみながら中に入ると
薄暗い中で作業着をきた初老の男性がこちらを見た。


「…何か用ですか?」


「渡瀬さんって…こちらにいますか?」


「ああ、2階の事務所やねぇ、呼んでくるから待ってな」


俺は入り口で突っ立ったまま
階段を上がる後ろ姿を見た。



柄にもなく
少しだけ緊張している



まじで…


なんで俺がこんな事をしているのか、自分でもよくわからない…



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