俺はお前だけの王子さま
しばらくして
階段から先ほどの男性に続いて、40代くらいの女性が降りてきた。



見た瞬間、一目でわかる。


渡瀬の母親だ…



髪を一つに縛って
作業着を来ている渡瀬母は


そんな身なりにも関わらず
渡瀬と同じようにどこか清楚な雰囲気が漂う人だった。



渡瀬の母親は俺をみて
少し微笑んだ。


「その制服…愛子と同じ高校の人かしらね?」


微笑んだ優しい目元が
渡瀬にそっくりだ。


「何か用事かしら?良かったら中にどうぞ」


黙る俺を
渡瀬の母親が手招きした。


俺は小さな応接室に通された。


渡瀬の母親がタオルを差し出す


「風邪ひくといけないから」


「………」


そこで俺は
自分がだいぶ濡れていることに初めて気付いた。


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