小話の寄せ集め
以前は生徒会のメンバーと親しいことにとやかく言うひとは、居た。
しかしながらヒンの決して媚びない態度と斬新で面白いアイデア、行事の増加により、ヒンの株は急上昇したのだ。
どんな面倒な事でも、例え裏方でも、ヒンは決して手を抜かなかった。
終わった後にヒンは嬉しそうに―――それはもう、嬉しそうに、笑う。
『喜んで貰えて光栄。嬉しいなあ』と。
誰かのために何かをする。この当たり前の常識がこの学園には無かった。
足の引っ張りあいの中でのヒンの行動はいつしか、とても居心地のいいものに変わっていったのだった。
今や後輩や先輩、教師陣に迄すかれているのだから、畏れ入る。
「終わったー、終了!」
優秀すぎるのも考えモノだと、数奇は思った。
早すぎるのだ。仕事が。
最近ではヒンが先回って仕事を片付けるものだから、中々生徒会室に来なくなった。
更にせっかく来ても、こうしてすぐに終わらせてしまう。
「(……、もう少し…一緒にいたい)」
数奇はチラリとヒンを見た。思いがけずに目があって、焦る。
「ん?チョコついてるッスか?」
「(……)いや、大丈夫だ」
落ち着け。相手はヒンだ。手強いぞ。
しかし隣に座る彼女にドキドキもする。
――あ、何気に香水使ってる。
隣に座る度に、何かに気づく。
――カーディガン、変えたんだ。
――少し髪切ったんだ。
表情に出ない彼は、こうして気づく一つ一つを大切に胸に宿す。大切に、大切に。
「もう少し、居てもいいッスか?」
一瞬、想いは届いたのかと都合のいいことを思った。
偶然でも、嬉しい。
もちろん答えなんか決まっていて。
なにも知らないで見つめてくるヒンに言う。
「好きなだけ、居て。ここに」
隣に、とは言えないけれど。
そうして笑うヒンにつられて、知らずにふっと笑う自分には気づかずに。