SWEET AIR








(教室内では目立たずそれなりに…って思ってたんだけどなあ…。)
当たり前だけど、ボクみたいにぼんやりしてて先を促された人はいない。
それに生まれつき色素が薄くて茶髪だから、目にもつきやすい。
覚えられてしまうのが、怖い。
虐められるかもしれないのが、すごく怖い…

そんなことを考えていた矢先、ボクの席の目の前に人が立っていた。

「藍原…くん?」

名前を呼ばれたことに動揺して、一番良い返答が思い付かない。思わずきょとん、としてしまった。
(うわわ…名前しっかり覚えられちゃってるよ!でもこの人誰だっけか…)

「俺、水木 綾人。俺も県外から来ててさ。知り合い、いないんだよ。
席も近いからよろしくな。」

「よ…ろしく…」

にか.と年よりも幼く人懐っこい笑顔で手を差し出される。
一瞬、躊躇はしたものの…悪いやつではなさそうなので、握り返してみた。

「…藍原、ほんと華奢だな」

「そんなに?」

「手ェ俺より細くて小せえし…」

ぎゅっぎゅっ.とおもちゃを握る動作で手をいじくる水木。
昔はよく友達としてたなー…なんてぼんやり見ていた。

「背も低いよな♪ついでに軽そう(笑)」

からからと笑いながら、微妙に皮肉る水木。思わず眉を寄せ、不機嫌ぎみに反撃する。

「うるさいな…伸びなかったんだ、重くなる必要もないよ」

ぺっ.と多少乱暴に手を振り払うと、にししと悪戯っぽく笑って見せた。
今朝の先輩にちょっと似てる…?

「ま、これから伸びるっしょ♪あ。次移動だぜ?」

「あぁ、うん」





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