Fahrenheit -華氏-


しかしどうやって切り出していいのか、考え付かず時間だけは経って、あっという間に日が暮れた。


近くのロッジ風の洒落たレストランで食事をして、考えをまとめるために飲んだワインが思いのほかうまかった。


さすが長野!


俺は洋酒より和酒の方が好きだけど、このワインはうまい。


瑠華もそのワインの味に感動したのか、俺達はやたらとアルコールが進んだ。


ほろ酔い気分で会計を済ませると、夜も9時。


道はすっかり暗くなっていて、ところどころ乏しい街灯だけが小路を照らし出していた。


ホテルに帰り着き、チェックインをするために荷物を出そうとトランクを開けたときだった。


トランクの隅に茶色い紙袋が転がっている。


何だぁ?


そう思いながら、紙袋の中を覗いて俺は目を開いた。


念のためにいっておきます。


決してAVなどの類じゃございません。


俺は紙袋だけを取り出し、トランクを閉めた。


「?」瑠華が首を捻る。


「荷物は?チェックインするんじゃないですか?」







「その前に寄りたい所ができたんだ。付き合ってくれない?」







俺の言葉に、瑠華は不思議そうに首を傾けていたが、


「いいですよ」と素直に頷いてくれた。






< 684 / 697 >

この作品をシェア

pagetop