月影
「久しぶりね」

言うと、彼は微笑んだ。
その彼の表情と顔色に、私は安堵する。


最初出会ったときは、今にも死にそうな顔色をしていていたから。
というよりも、本当に、死んじゃうんじゃないかと心配したくらい。


「痛い、とか、辛い、とか。ない?」

聞くと、彼は小さく『大丈夫』と答えた。

「そっか。じゃ、行こう」

彼が首を傾げる。

「どこへ?」

私はそっと手を差し出した。

「家に帰ろう」

答えると、少しだけ困惑した表情を彼は見せたが、私の手をとり、柔らかく微笑んだ。


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