月影
「それじゃ、いきますか?」

書類に一通り目を通すと、先生は扉を開けて言った。

「はい」

先生に案内されて、私は彼のいる部屋へ向かった。

目的の部屋のドアを開けると、その向こう側に、背の高い青年が、窓の傍に立って外を眺めている様子が目に入った。

「迎えが来たよ」

先生の声に、青年はゆっくりとこちらを振り返り、そして笑った。

「もし体調に何かあればすぐに連絡をください。あと、半年に一度の定期検査については、青柳さんのご要望通り、僕が担当しますので」

そう言って、先生は少し寂しそうに笑った。

「ありがとうございます」

青年が私の傍へ近寄ってきた。

「先生さえよければ、いつでも連絡してくださいね。用がなくても」

そう言うと、先生は少しだけ照れたように笑って、小さく頭を下げて部屋を出ていった。


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