月影
「なんでまた急に、予備校の夏期講習に行くなんて言い出したんだ?」

政宗に不思議そうに聞かれて、深幸はまた、ため息をついた。

「友香がね、大学いくんだったら、行っといた方がいいって言ってたから」

深幸の言葉に、更に政宗は意味がわからない、といった風に首を傾げた。

「大学いくならって…お前、予備校がどういうところかわかってんだろ?」

「わかってるよ…」

「お前の行きたい大学なら、いまさら予備校に行かなくっても十分余裕だろ?」

取り立てて頭がすごくいいわけではないが、学校の授業がわからないわけでもなく、成績自体はどちらかといえば優秀な深幸。
受験予定の大学自体も、先生からは推薦をもらえることになっているし、難関大学といわれるような学校を目指しているわけでもないので、予備校に通う必要は確かにないのだ。

「でも、友香が、受験対策になるから、夏期講習くらいは行っといた方がいいんじゃない?って」

「お前にしては珍しく人に流されたんだな」

くつくつと笑う政宗。
深幸はむっとした表情を浮かべる。

「煩いな。高校受験とは違うんだもん。心配じゃん」

深幸の言葉に、政宗は笑った。

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