月影
家の近くの川沿いの道を、ゆっくりのんびりと歩く。自分を照らす太陽の光は暖かく、少し、暑いとも感じる。

「もう春が終わるんだぁ…」

家に帰ったら、夏服をそろそろ準備しないとな、なんてことを思っていると、ふと、後ろから、深幸ちゃん!と呼ぶ声がした。

「あ、楓ちゃん。久しぶりだね」

振り返ると、そこには小学生の男の子と女の子が仲良く手を繋いで立っていた。
少女の名前は楓。深幸の家の隣に、数年前に越してきた子だ。
最近は、深幸が受験だからと、彼女の母親が、遊びに行くことを止めている為、あまり一緒に遊んでいないのだが、以前はよく、深幸の家に遊びに来ていた。

「おさんぽ?」

聞かれて深幸は、苦笑しながら頷いた。

「うん、息抜きしに、お散歩にきたの。お母さんには内緒だよ?」

言うと彼女は嬉しそうに、ないしょ!と頷いた。
< 93 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop