hollow love



2011.04.29


俺がアフターを終えて

店の部屋に戻っていると、

ビルの隙間の奥のほうで凄い音がした。

「てめぇいいかげんにしろよ!!」

「..!!」

「るせぇ!!早く来いよ!!
 金がねぇなら身体で払え!!」

「....!!~」

すげぇいかついチンピラ風の男と

そいつに引っ張られている

あのガキが目に入った。

ガキの言葉はよく聞こえないが、

身体で払え、はちょっと

聞こえないフリできねぇな。


はぁ、とため息をつきながら、

汚いビルの隙間を歩く。

春らしくない冷たい風が

髪や頬を切る。


「おい、何してんだよ」

見れば分かるけど。

「あぁ!?誰だてめぇ!!
 ひょろいホストが口出すんじゃねぇ!!」

凄む男の後ろで、ガキが怯えた顔して

俺を見つめている。

あー、可愛い。

ほっとく訳にはいかねぇな。

「いや..どうでもいいから、消えろ」

「..は??」

「熊五郎みてぇないかつい男は、
 新宿に似合わねぇよ。
 さっさとお山に帰んな。」

「て、てめぇ誰に向かって言ってんだ!!
俺の親父はなぁ、森元組の..」

男がそう言いかけたところで、

腹に思いっきり蹴りを入れる。

男が激しくむせ込みながら、

苦しそうにしゃがみ込む。

「知らねぇよ」




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