【短編】10年越しのバレンタイン


公園の入り口には、あったかいとつめたいが半々になった自販機があった。

私は小銭を取り出すと、ホットミルクティーのボタンを押す。

がこん、と音がして商品が出た。





 ベンチに戻った私が見たのは、さっきまで私がいた場所に座る1人の男性だった。


「………」

私は思わずポカンとした顔で立ち尽くす。

すると男性が私の気配に気付いて、うつむいていた顔を上げた。

「あ、もしかしてここで誰かと約束とかしてる?」

「いえ…」


答えながら、私の目は男性の隣に置かれている私のバッグと、あの箱に行く。

男性が私の目線を追って「あ…」と声をあげた。


「これ、キミのか。気付かなくて申し訳ない」

そう言って腰を上げようとした男性を、私は笑顔で制す。

「私なら、反対側に座りますから」



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