悪魔的ドクター
「翔灯は優しいから…。だから患者のアナタを家に受け入れているけれど、それに甘えないで。彼を利用しないで」



違う…

そんなんじゃ…ない。


甘えてなんか…
利用してなんか…


違う。



でも
何も言えない。


白石さんの威圧感に
言葉を封じられているみたい…。

"反抗したら
何されるかわからない"


そんな恐怖さえ感じてしまう。




だから
あたしから出てきた言葉は…



「…すみませんでした。出て…行きます」



自分に嘘をつき
先生の前から姿を消す事に
了解してしまう辛い返事だけ。



「そ?良かった~!姫宮さんならわかってくれると思った♪」



先ほどまでの
威圧的な態度とは一変
ニコニコと笑顔で喜んでいる。



この人は…怖い。


それほどまでして
先生と一緒にいたいって
イヤでも伝わる
彼女の想い…。



「必ずよ?裏切ったら私…、姫宮さんに何するかわからないから」



最後の最後まで
悪魔の様な笑みで捨て台詞を残し彼女は去っていった。



残されたあたしは
足が動かず無意識に体は小刻みに震えていた。




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