悪魔的ドクター
なんとかエレベーターに乗り込めたが…


白石さんが放った言葉が
頭の中でリピートする。



『消えてもらいたい』


『甘えないで』


『利用しないで』




あたしに選択肢なんて
初めからなかった。


いくら"好き"だと気付いても
"離れたくない"なんてワガママ
初めから許されるはずがなかったんだ。



あたしがすべき事は
"先生の前から姿を消す事"




ただそれだけなのに…



"一緒にいたい"と願ってしまい
迷いが残る。



心のどっかで
先生に『行くな』って言ってもらいたくて…


期待している自分がいる。



そんな期待
意味がないのに…。






***




カードキーを握りしめ
部屋の前で立ち竦む。



開ける勇気が…ない。


ここを開けたら
きっと、もっと…
出ていきたくなくなる。




ヤダよ…

だけど
そんなのダメなんだ。






震える手で
カードキーを機械に通そうと
腕を伸ばした時だった……





━━━━ガチャ…




扉が開き
中から出てきたのは



「せ、んせ…」



驚いて言葉が詰まる。



「えッ、咲桜ちゃん!?」



先生も驚いたみたいで
目を丸くしている。





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