オアシス
学校を卒業し、長くバイトをしたコンビニも辞め、ついに東京へ行く日が数日後に迫っていた。



………………



上京の朝ーー


午前中に目が覚めたが、瞼が重たい。昨日は興奮して寝つけなかった。カーテンを開けると、柔らかな日射しが射し込む。暖かく感じられる四月のこの時期はまだ肌寒い。

洋服に着替え、リビングへ。母親がキッチンに立っている。


「あんた、お昼ご飯は?」

「あんまりお腹すいてないからいらない……」


母親は返答をせず、包丁の音を響かせている。

今日は平日なので父親は仕事、妹は学校へ行っていていなかった。

飛行機は18時代の便。今はちょうど転勤などで移動が多い時期なので、昼間の便は満席で取れなかった。

私は居間で何度も荷物のチェックをする。荷物といっても旅行鞄ひとつだ。中身は……、

着替えと化粧品、財布、携帯の充電器、ガイドブック、小説にipod……。
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