オアシス


菜々が、しんみりと呟いた。

「花火なんて何年ぶりだろう」

私は、菜々に言った。

菜々に言ったつもりだった。

すると、

「小学校の時以来だな」

……?

ハッとしてすぐ左横を見ると、準平が花火を見上げて呟いた。

その横顔は、何だか寂しくも母性本能をくすぐられるような哀愁が漂っているような雰囲気に包まれていた。私は、そんな準平から目を離せないでいる。次から次へと色々な花火があがる。そのたびに菜々は嬉しそうに子供みたいにはしゃぐ。準平は何も言わずにあがり続ける花火を見上げている――

打ち上げ花火をあげ続けていたいっちーが、物足りなさを感じたのか手持ち花火のように手に持って火をつけた。勢いよく花火は吹き出した。

「ちょっと危ないよ! やめて! 何してんのあんた!」

菜々がわめきながら砂浜に足をとられながら逃げ回る。聡も逃げ回っていた。すごく危ない行為でもいっちーはやめようとはしない。逆に楽しんでいた。

< 98 / 123 >

この作品をシェア

pagetop