スカイ・ライン
 

珍しく、奈緒の言葉が胸の奥にすとんと収まった。

それ、なんだかわかる気がする。

共感するのはシャクだ。

けど、わかる。

最初は意味わかんなかったけど、すげぇわかる。


用するに、自分という人間を放り出して自分でない誰かになりたくなるってことだろ?

逃げて逃げて別の人間になりたくなる。

そんなら、俺なんかしょっちゅうだ。

無駄に神経質だし、二つのことを一気にこなせない性格だし、要領悪くて恋人とも長続きしない。

最悪だ。


いっそのこと全部放り出したいって思う。

そんでできるならこいつみたいに……



「あっ」

奈緒は天に向かって指を差す。

「飛行機雲だ」

指の先を見ると、全てを包み込むように広がるオレンジの中に、一本の灰色の線が入っていた。


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