スカイ・ライン
 

俺は屋上の鍵を常に持ち歩いている。

制服のズボンの中に入れているけど、意外に落ちないしなくさない。

まあ、なくしたら大変なことになるんだけど。

理由は今日みたいな急用に対処できるようにだ。


けど、今日コレ使う必要はなさそうだ。

階段の先にあるシルエットを見て、俺は笑みを浮かべた。


「よお」

俺が声をかけると、「久しぶり。今日はどうしたの?」と奈緒は言った。

「別に。暇だったから来た」

「偶然ね。あたしも暇だったから来たの」

奈緒は階段の下を見下ろす。

「誰もいなかった?」

「いたら今頃捕まってる」

「だよね」

奈緒はそう言うと、久々だから変にどきどきしちゃうんだよね、と苦笑した。


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