スカイ・ライン
 

「それより、さっさと開けろよ」

急かすように言うと、奈緒はたちまち呆れたような表情になって、

「はいはい」

と言いながらスカートのポケットに手を突っ込んだ。

奈緒の屋上の鍵の隠し場所だ。

奈緒は鍵を回すと、慣れた手付きでドアを開けた。

数日前に比べ、数段と暖かくなった風が、身体全体に吹き付ける。

とうとう春が近付いてきたか、としみじみ思った。



もうすぐ慌ただしかった高校一年が終わる。

別にこの学年がひとつ変わったところで、大した進展はないだろう。

だがそれでも、何かが変わってしまうような気がして焦る。

その正体が何なのかはまだわからないが。




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