たった一人…。

勝手に涙が出てくる。とまって欲しいのに、どんどん出て来て服が濡れていく。


「あと…。俺は別れるとは一言も言った記憶は無いんだけど?」

そういうと、私の目の前にいる彼は両手を広げて笑顔で私を見つめる。

その胸の中に飛び込んだ。

涙も鼻水も、どうでもいいや。(笑)

「おかえり。」

私をぎゅっと抱き締める彼の力は強かった。

「ただいま。」

「私、本当に戻っても良いの?」

「迷惑かけちゃうよ?」

うん、うん、と頷きながら、

「分かってる。もう喋るな。」


しばらく、抱き合ったまま時間がとまった。


私は夢を見てるんだろうか。


「そうだ。加奈がおまえにって。」

1つの封筒を手渡された。
< 71 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop