たった一人…。

9月の終わり、彼と私、香里と田村くんの4人で食事会をする事になった。


「俺ら、大変っすよね。」


と、田村くんが私達を見ながら彼に向かって話す。


「あぁ、本当だよな。ワガママ娘2人には困ってばかりだよな(笑)」


と、笑顔で私を見る。


『どこが!』


と、香里と私は声を揃えたように2人の背中を叩く。


「しかし、まぁ。豊広さんの彼女がこいつとは。何か意外っすね。もっとこう…。」


「バカ!」


って香里が田村くんを叩く。


ばつが悪そうに彼は頭を掻きながら、


「まぁ、昔はいろいろとな。」

と。


「へぇ、そんなにプレイボーイだったんだ。」

と、私は彼をつねってみる。


「そりゃあ、若い頃はかなりモテたさ。でも、今はもうおっさんだからなぁ、女の子が寄ってこなくなったな。」


ヤバい、女としての私が爆発寸前だ。


「もう帰る!じゃあね。」

立ち上がると彼が私の手を掴み、


「いやいや、ほら。女が寄ってこなくなったから、今はもう奈央だけだぞーって。な?」


その言葉の瞬間に私は顔が真っ赤になるほど恥ずかしくて、笑顔になった。


「はいはい、ごちそうさま。バカップルだねぇ。」


と香里が私達を鼻で笑う。

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