たった一人…。


秀人…。

そこまで考えてくれてたなんて…。

私、勝手に不安になってた…。


「ありがとう。」


その言葉しか声に出来なかった。


呼吸を落ち着かせるのに、必死だった。


頭がクラクラする。

ちょっと過呼吸になったかな…。


力が抜け、彼に身を委ねる。


「大丈夫か?すまん、不安にさせて。」


「うん、大丈夫。最近、秀人は謝ってばっかだね。」


「ああ、そうだな。」


「いつから研修に行くの?」


「来月の予定だが、はっきりした事はまだ分からない。」


来月…。

もうすぐじゃん。

あっという間に居なくなっちゃうだね。



それからの毎日は忙しかった。

私は階級をあげる為の勉強をしながら、実績を残す為に仕事もこなす。

彼は研修に行くまでに終わらせておかない仕事がたくさんあって、ほとんどプライベートでも一緒に過ごす事は出来なかった。



連絡を取る事もあまり出来ないまま、時間はどんどんと過ぎていく。



さすがに私の体も悲鳴をあげた。


毎日クタクタになるまで仕事をやって、帰っても勉強をする。

睡眠時間は三時間程度。


でも、この努力が秀人とのこれからの為だと思えば、体の悲鳴でさえも幸せに感じられた。



でも私の犯している罪は、簡単に幸せは与えてくれなかった…。




< 86 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop