狂犬病予防業務日誌
(開けるか……)
段ボール箱に入っている犬の生死を確かめないことには何も先に進まない。生きていれば置いて帰ってもらうし、死んでいれば持ち帰ってもらう。
だが、中身を確認することが急に困難な作業に思えてきた。もしかして犬が恐ろしい病気に感染しているのではという勘繰りが頭の中を駆け巡り、恐怖が増殖して行動を鈍らせた。
(狂犬病の資料なんて読むんじゃなかった……)
「フラン犬って知ってるか?」
老人が重い口調で尋ねる。
「知ってますよ」
フラン犬が話題になって1年しか経っていないのに随分懐かしい出来事のような気がする。
フラン犬の第一発見者は下校途中の小学生で住宅街の一角を曲がると様々な模様で継接ぎの皮膚を移植された犬と出会った。
白地に黒い斑点がついたダルメシアンとおぼしき皮膚や茶色の長い毛の部分もあれば灰色、黒、こげ茶などセンスの微塵も感じられない配色で縫い糸の痕も痛々しく右と左の耳も不揃いで元々がどんな犬だったのかわからないくらいパッチワークのような小片だらけのその犬は吠えるなどの敵対行動を取らずに小学生の前を悠然と横切った。
家に着いた小学生はさっそく母親に報告した。
「本物の雑種を見たよ」
段ボール箱に入っている犬の生死を確かめないことには何も先に進まない。生きていれば置いて帰ってもらうし、死んでいれば持ち帰ってもらう。
だが、中身を確認することが急に困難な作業に思えてきた。もしかして犬が恐ろしい病気に感染しているのではという勘繰りが頭の中を駆け巡り、恐怖が増殖して行動を鈍らせた。
(狂犬病の資料なんて読むんじゃなかった……)
「フラン犬って知ってるか?」
老人が重い口調で尋ねる。
「知ってますよ」
フラン犬が話題になって1年しか経っていないのに随分懐かしい出来事のような気がする。
フラン犬の第一発見者は下校途中の小学生で住宅街の一角を曲がると様々な模様で継接ぎの皮膚を移植された犬と出会った。
白地に黒い斑点がついたダルメシアンとおぼしき皮膚や茶色の長い毛の部分もあれば灰色、黒、こげ茶などセンスの微塵も感じられない配色で縫い糸の痕も痛々しく右と左の耳も不揃いで元々がどんな犬だったのかわからないくらいパッチワークのような小片だらけのその犬は吠えるなどの敵対行動を取らずに小学生の前を悠然と横切った。
家に着いた小学生はさっそく母親に報告した。
「本物の雑種を見たよ」