小指心

未来予想図

お試し六日目、下校時間。

この一週間、異状に暑かったはずなのに今日は涼しい。
しかも、狐の嫁入りなんて。

「ちょっと、雨ー?」

「・・・」

私はただ窓の隣で立ち尽くしている。

「ちょっと梓、ポケット傘とか持ってる?」

「持ってない」

えー、様乃はカバンをあさる。
私は雨が止むのを見つめていた。


 小指心
  未来予想図


「ぁ、傘あった。早く帰ろー」

様乃は私に言った。

「あ、うん」

そういうと私は様乃の後ををついていった。





「でもさぁー」

「?」

「結構、夕暮れと雨って綺麗だよね」

「ぁあ、そうだね」

ていうかなんで『狐の嫁入り』なんだろう。

「梓・・・」

「ん?」

「明日だね」

「なにが」

「お試し最後」

・・・あぁ。

私は空を見上げた。
雲が綺麗に煌めいている。

「そうだねぇ・・・」

「どうするの?」

「・・・分かんない」

様乃はそれを聞くとカバンからウォークマンを取り出した。

「なに聴くの?」

「ルル花」

今すごく人気の女性ボーカルだ。
ぇ、ていうか様乃ってそういうの聴く人だった?

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