幸せの寄り道



~聡太~




ある日俺は不思議な子に会った


その子は今まで父親みたいな感じで接してくれていた克則さんの娘だと言った



俺の目の前に来た時、正直びっくりした



克則さんからたまに聞いていた彼女のイメージと実際のイメージがぴったりだった



でも、最初はおとなしくてかよわいのかと思えば


実際は全然で少し強気な性格で負けず嫌いで、でも寂しがりやで弱い一面を持ちながらもいざという時思いもよらない正義感と芯の強さを持っていた



克則さんはなんだかんだ言いながらもいつも嬉しそうにその子の話をしていた



だけどどう表現していいのか分からなくて彼女を悲しませてしまうといつも悩んでいた



彼女の性格からしてきっと父から愛されてないのだと寂しい思いをしているのだろうけど、どうしていいかわからないといつも言っていた



こんなに愛されているのにそれもわからないままいる




でも、それでも笑顔にくもりのないいい顔をする




俺も父親がいないから寂しさがどれほど辛いかわかるけど、彼女の目の前に居る人から愛を受け取れない寂しさはどれほどなのだろうかと考えてしまう



あの小さな体でどれほどの悲しみをため込んできたのだろうか



初めて会った日なぜか自然と彼女を受け入れられた


それはきっと克則さんから聞いていた彼女と自分自身を重ね合わせていたからかもしれない




今では彼女と話すことも母と3人で買い物に行くことも楽しみで仕方がないほど彼女は俺の支えになっていた



だけどひとつだけ前に克則さんから聞いたことがいつも引っかかっていた




『あいつ、教師と親しくしているそうだ。』



その意味はただ仲がいいだけだと思ったが克則さんの表情を見ればそれ以上なのだとわかった





こうして話している今もその教師のことを考えているのだろうかと思ってしまう



いつからか彼女を独占したいとさえ思うようになった






最初の出会いがどうであれ、俺は彼女に惹かれて行った




だけど、気持ちを伝える程の勇気は持ち合わせていなかった












< 163 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop