孤高の天使
「ラファエル様…?」
様子の違うラファエルに呼びかけるも、表情は崩れず…
片手で握った聖剣の鞘を咥えてゆっくりと引く。
月明かりに反射して異様な雰囲気を醸し出す聖剣。
ラファエルは拘束していた私の手を解放し、両手にしっかりとその聖剣を持たせた。
そして……―――――
ピタッ……
「この聖剣でここを一突きすれば俺は消える」
「ッ………!」
そう言って聖剣を持たせた私の手を自分の心臓に持って行くラファエル。
思わず手を引くが、ラファエルの手はそれを許してくれなかった。
グッと私の手ごと聖剣を引き寄せ、聖剣の切先がラファエルの黒衣に皺を作る。
「どうしたイヴ。天界に帰りたいんだろう?」
ラファエルが私の耳元で零す言葉はまさに悪魔の囁き。
また近くなった距離に聖剣は容赦なくラファエルの黒衣に突き刺さる。
カタカタと手が震えた――――
布一枚の向こうにはラファエルの心臓。
そしてその心臓を射抜けば、ラファエルは消える。
そうなれば私は天界に帰れるけど……
「どうした?やらないのか?俺を滅するためにこれを受け取ったんだろう?」
挑発的にアメジストが笑う。