孤高の天使



「君がやらないなら……」


ラファエルはそう呟いて、私の手を更に引き寄せた。

既に限界まで引き寄せられた聖剣は黒衣を突き破り、切先がラファエルの胸の表面に到達する。




「ッ……!」


咄嗟に引こうとするが、圧倒的な力には勝てない。

尚も私の手ごと聖剣を引き寄せれば…




ツー……――――――

聖剣の切先からラファエルの血が伝う。




「ッ…やっ…やめて……」


声と手が震える。

頭を横に振りながらも視線は剣を伝う血から離せない。




ラファエル様が消えてしまう……

そう頭が直感した瞬間―――――




「ラファエル様…やだ……」


ぼろぼろと涙が零れた。

自分の力ではどうにもならない今、自分の胸に聖剣を突き立てるラファエルに訴えるしかない。




「やめて…お願い……わたし…こんなこと望んでない…」


ラファエルは涙を流して訴える私に目を見開き、次の瞬間には困ったような笑みを浮かべる。

「本当に君はズルいよ…」そう呟いて拘束していた手を緩めるラファエル。

カタカタと震える手で持っている聖剣。

その刃にはラファエルの血がついていて……

ハッと我に返ってラファエルの胸を見上げる。



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