孤高の天使



フェンリルの前足が私の指先に触れた瞬間。



パシッ―――――

しっかりと前足を握って引き寄せた。

胸に抱えたフェンリルが私を見上げる。



大丈夫…貴方だけは助けるから…


心の中でフェンリルに語りかけてふわりと微笑む。




そして……



バサッ―――――

持てる聖力を振り絞り、羽を具現化させる。

しかし羽を広げた途端、闇に羽が蝕まれた。



「くッ……」


ジュッ…と焼け焦げる様な痛みに思わず苦痛の声を上げながら体を覆うように羽を丸める。

こんな時に思うのもなんだが、4枚羽で良かった。

1枚1枚剥がれていく白い羽根が上昇気流に乗って滝の上へ上へと昇る。

どこか他人事のように思いながらそんな光景を見つめる。




フェンリルは元々闇の魔獣。

この闇には耐えられる。

この滝の底がどこまであるかは分からないけど…

ラファエル様は助けてくれると言ったから。

信じろと言ったから。



私はダメかもしれないけどフェンリルなら…



だから…それまでもって……




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