孤高の天使



グラッ……――――

恐らく先ほど視界が揺らいだのは空間転移を行ったからだろう。

足元はぐらつくし、強い眩暈が襲っている。

けれど、アザエルが覗く鏡の向こうに何があるのかが気になった。

きっとそれは良くない事だと分かっていたから…




「こちらに」


この状況に在って緊張感の欠片もないアザエルはにこやかに私を鏡の前へと誘う。

一瞬、本当にそこへ言ってよいものか迷い、歩みを止める。

すると、アザエルは一層笑みを深めてこう言う。




「おや…いいんですか?見なければきっと後悔しますよ?」


言う通りになるのも嫌だったけど、意味深なアザエルの言葉に抗うことができず、さぁ…と導くアザエルを警戒しながら鏡の前に立った。



けれど、鏡の中は薄暗い霧が立ち込めていて何も見えない。

やっぱり私をからかっただけなんだ…と思ったその時。

鏡の中の霧が晴れて行き、ぼんやりと石畳の廊下が映し出される。




ここは………


見覚えのある様な気がして鏡を凝視する。

記憶を辿ってみるが、はっきりと思い出せない。



< 213 / 431 >

この作品をシェア

pagetop